片山樹さん(25)林野庁広島森林管理署 (平成29年度普通科特別進学コース卒業)

  • ●人が集まってくる木のような存在に

 子どものころから、なんとなく、大人になったら山や自然にかかわる仕事をしたいと思っていました。家族で源流遊びに出かけたり、祖父母の家が山深いところにあって、よく遊びに行ったりしていた体験が根っこにあったからかもしれません。大学進学先も、演習林を持っている高知大学の農林海洋科学部農林資源環境科学科を選びました。

 名前の樹(いつき)は、父が「木には雨宿りする人、憩いを求める人、いろんな人が集まってくる。そんな木のような人間になってほしい」と願って命名したそうです。自分で名前と職業を結び付けて意識したことはありませんが、結果的には名前と縁の深い仕事を選ぶことになりました。

 

  • ●地図1枚で現場を歩けるようになりたい

 林野庁に勤務して間もなく1年。年齢の割にキャリアが浅いのは、就職時に大ポカというか、寄り道をしてしまいまして(苦笑)。国家公務員試験に合格して林野庁で面接を受けたんですが、合否連絡がなかなか来ないため、しびれを切らして他の官庁にお世話になることを決めたら、その後に採用通知が届いたんです。辞退は失礼だとその官庁に入ったんですが、「やはり、自分のやりたいことをあきらめたくない」と、半年後にもう一度試験を受け直して林野庁に入庁できました。

 この1年、立木販売(国有林の木を立木のまま売って伐り出してもらう)、収穫調査(伐採前にどのくらい木があるかを調査)、国有林の境界に関すること、森林の大切さを知ってもらうイベントなど多種多様な仕事に携わってきました。「境界検測」はなかなか大変な業務でしたが、報告書が上司から認められ、うれしかったですね。やり遂げたという達成感がありました。

 今後の目標として、GPSに頼らずに地図1枚で現場を歩けるようになりたいと思っています。道から外れ、山の中に入ると周りは木や草だけで目印になるものが少ないんですが、少し前までの職員はみんな、地図だけを頼りに山を歩き、目的の作業をしていました。今は便利なものがたくさんあり、そういった技術を無理に身に着ける必要はなくなってきましたが、自分の力だけで山を歩き、読図力や判断力を培うことは、いざというときに必要になると思うので、先輩に教えてもらいながら勉強していきたいと思います。

 

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  • ●山が相手。せかせかしない職場

 職場は、山好き、現場好きで、ゆったりしている人が多いです。業務の主な対象が山で、一朝一夕では片付かない、何十年というスパンで完成までたどり着くという性質の仕事のためか、職員の多くがゆとりを持ち、自分のペースで働いていると感じます。もちろん、工期末などはすごく忙しいんですけど。

 仕事の特性としては、現場できつい傾斜面や藪が生い茂って足の踏み場もないところを歩くこともあれば、事務所でひたすらパソコンとにらめっこの一日もあり、両極端の仕事があるというのが特色ですね。

 いずれにしても、自分の興味のある分野に身を置けて、仕事を覚えられる。ありがたい環境だと思っています。

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  • ●バイクツーリングで休日満喫

 休みの日は、もっぱらバイクツーリング。愛車を駆って、いろんな所へ出かけ、その足で好きな神社仏閣を巡ったりしています。宮島の厳島神社の大聖院は紅葉シーズンが特にお薦めです。宮崎の高千穂峡も印象に残っています。

 

  • ●どっぷり課外授業。先生と仲間に感謝

 高校時代の思い出といえば、やはり課外授業。同じクラスの生徒はみんな、そうじゃないかな。僕の場合は2年進級時に田所先生から「特進に来ないか」と声をかけていただいて、課外の洗礼を受けることになりました。(笑)。当初は通常の授業プラスアルファ程度だったんですが、3年生の終盤には連日、夜9時ごろまで特訓。先生やクラスメートと一緒に過ごした時間が家族より長かったですね。今でも密な関係が続いています。遅くまで授業をしていただいた先生方、一緒に勉強に取り組み、競い、励まし合った友人たちには感謝しきれません。

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  • ●やりたいことに誠実に向き合って

 後輩に伝えたいのは「取り組む姿勢」を大切にすること。周囲の人からどれだけサポートしてもらったとしても、最後は自分の足で立って進まなければなりません。自分の進みたい方向、目指したいものが今はっきりとは見えていなくても、なんとなく興味が持てるもの、やってみたいと思えることに誠実に向き合って、ひたむきに努力することが大切。僕が一度、就職で失敗したので、なおさらそう思います。     

                     (令和7年3月取材)