各界で活躍している本校卒業生を紹介する新シリーズ「お元気ですか 先輩」を随時掲載します。第1回は今春、岡山大学薬学部を首席で卒業し、同大学病院の薬剤師として社会人のスタートを切った杉野雅哉さん(24)=平成29年度普通科特別進学コース卒業=です。
センター試験トップの成績で薬学部に入ったんですが、オリエンテーション担当の教授から「入試の成績とGPA(大学の成績)とは相関がない」と言われ、「よし、それなら自分がやってやろう」と心に決めました。給付型奨学金をたくさんいただき、授業料も免除してもらっていましたが、勉強するだけで、お金をいただけるのですから、ありがたいこと。「勉強も仕事だ」と、6年間頑張りました。
小学5年の時、東日本大震災が発生。医療従事者が足りないという報道を見て、将来は薬剤師になろうと。被災地で奔走する姿は、子供心に「カッコイイ」と思えたんですね。高校時代に一時、進路に迷ったこともありました。物理が大好きだったので、その方面に進もうかなあと。でも、自分はアインシュタインにはなれないと思って、初志に戻りました。
4月から大学病院の薬剤部に籍を置き、調剤業務に携わっています。薬剤師の仕事の流れは、処方箋の内容が正しいかどうかチェックする「処方監査」→調剤(薬の準備)→調剤した薬の種類や数量に間違いがないか確認する「調剤鑑査」→投薬と進むんですが、今は調剤の練習に励んでいます。例えば、錠剤がのめない人のために錠剤を潰して粉薬にして分包したり(=散剤の分包)、薬をたくさん飲んでいる人や自己管理が難しい人のために一包化をしたり…ですね。業務に早く習熟して、いずれは、投与後の症状の変化などを見て「処方提案」できるようになりたいと思っています。薬剤師の仕事と並行して、博士号を取得するため4月から大学院にも進みました。二刀流で、忙しい毎日です。
理想の薬剤師? 人を診る薬剤師です。薬剤師は「対物業務」になりがちですが、医療は病気だけを診るのではなく、患者さんを診ることが大切。そのためには、医師や看護師ときちんと話ができ、チームを組める薬剤師になりたい。薬の知識はもちろん重要ですが、病態の知識も含めた医療全般についてしっかり学んでいきたい。
将来、研究者を目指すか、薬剤師として臨床を続けるかは分かりませんが、どちらの道を進んだとしても、そこで一番やりたいのは「教育」です。学部の6年間、学習塾でアルバイトし、初めは勉強を教える(教え込む)ことが仕事と思っていました。でも結局、勉強は本人のやる気次第と気づかされ、いかにやる気にしてあげられるかを真剣に考えるようになりました。実習に来る学生のモチベーションをどう上げるか、患者さんにいかに前向きに薬を服用してもらうか。思えば、中学、高校時代に熱量の高い先生方から僕はやる気スイッチを押してもらってたんですね。受け取った熱量を、今度は僕が周囲に還元していきたいと思っています。
特進コースでは先生方に親身にサポートしていただき、感謝していますが、3年の時、勉強をいくら頑張っても成績が横ばいで、へこんでいる時期がありました。そんな時、級友や先生が他愛もない話題で、さりげなく励ましてくれるんですね。ライダーキックの角度はどれが一番いいか、とか(笑い)。本当に仕様もない話なんですが、助けられました。
高松中央高校の後輩に伝えたいのは、大学に進学するなら、大学卒業後にどんな自分でいたいのかをしっかりイメージしてほしい。そこから逆算して、今やらないといけないことは何なのか、何を頑張るべきなのかを明確にし、それらに今から取り組むことが大切だと思います。
〈令和6年4月取材〉